就職してしばらくたつと、面接では想像できなかった困りごとが出ることがあります。仕事量をうまく相談できず、疲れて生活のリズムが崩れることもあります。以前の支援事業所へ今も連絡してよいか分からない悩みも、決して本人の働く力だけが原因ではありません。

就労定着支援は、このような「就職した後」の仕事と生活を支える障害福祉サービスです。ただし、利用できる人と始められる時期が決まっています。

今回の記事では、対象条件、相談できること、利用の流れと費用、事業所の探し方を整理します。自分が対象か分からない場合も、対象外だった場合の相談先まで確認できます。

就労定着支援とはどんなサービスか

本人だけで抱えず、会社と支援員を含む三者で確認する内容を分けて考えます。
  • 本人が伝えること困った場面、自分で試した工夫、ほかの人へ共有してよい情報が材料になります。
  • 会社と確かめること担当業務、勤務時間、休憩、職場内の相談相手を具体的にします。
  • 支援員が行うこと仕事と生活の課題を整理し、必要な関係者の役割をつなぐことが中心です。

就労定着支援とは、障害福祉サービスを利用して一般企業などへ就職した人のためのサービスです。仕事を続けるなかで生じた課題を相談できます。本人との面談に加え、必要に応じて会社、家族、医療機関、ほかの支援機関との連絡や調整を行います。

相談できるのは、職場のことだけではありません。生活リズム、体調管理、通院、家計など、働き続けることに影響する生活面も一緒に整理できます。「会社の話ではないから相談できない」と分けなくて大丈夫です。

利用を始める時期には決まりがあります。就職後すぐではなく、働き始めて6か月を過ぎてから利用を検討します。就職から最初の6か月は、それまで利用していた事業所が職場への定着を支えます。

対象には、就労移行支援や就労継続支援A型・B型などがあります。

就労定着支援の利用期間は最長3年間です。個別の支給期間と更新は、市区町村の支給決定によります。就職した日からずっと同じ制度を使うのではなく、時期によって支援の担い手が変わる仕組みです。

表は左右にスクロールして確認できます。

就職後の時期・主な支援の考え方・確認することを確認する表
就職後の時期主な支援の考え方確認すること
就職から6か月まで就職前に利用していた事業所などが定着を支援連絡できる担当者、面談の時期、会社との連携方法
6か月を過ぎてから支給決定を受けて就労定着支援を利用利用する事業所、相談内容、面談方法
就労定着支援の終了前必要に応じて会社や地域の支援機関へ引き継ぐ今後の相談先、共有する情報、本人の同意

「職場定着支援」という言葉は、就職後の支援全体を広く指して使われることがあります。一方、「就労定着支援」は障害者総合支援法に基づく特定の障害福祉サービスです。

就労移行支援・ジョブコーチとの違い

会社の支援、以前の事業所の定着支援、ジョブコーチによる職場適応援助も、広い意味では定着を助けます。ただし、それぞれ利用条件や期間は同じではありません。

ジョブコーチは、職場で具体的な課題があるときに職場へ出向き、本人と会社の双方を支援する制度です。就労定着支援を利用している人にジョブコーチが必要な場合は、支援機関どうしで相談し、役割を分けて進めることがあります。

対象になる人と確認したい条件

利用可否を自分だけで決めず、窓口へ状況を伝えるための情報を少しずつ用意します。
  • 以前のサービス名就職前に利用していた事業所と障害福祉サービスの名前を控えておきます。
  • 就職・復職した日利用を始められる時期を確認するため、働き始めた日付が必要です。
  • 現在の雇用状況会社名や契約の状況は、雇用契約書や受給者証などでも確認できます。
  • 今いちばん困る場面仕事か生活で整理したいことを一つ選べば、最初の相談には十分です。
  • 連絡しやすい方法電話、メール、対面など、負担の少ない連絡方法を希望として伝えましょう。

対象になるかを見るときは、障がいの種類だけで判断しません。どの障害福祉サービスを利用して就職したか、就職からどのくらいたったかも確認します。

厚生労働省は、対象となる利用歴として、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援などを示しています。これらを利用した後に一般企業などへ新たに雇用された人が対象です。さらに、就労に伴う環境の変化によって生活面の課題が生じていることも条件です。

自分の状況は、次の順に確認できます。

  1. 就職前に、対象となる障害福祉サービスを利用していたか
  2. 企業などと雇用契約を結び、新しく働き始めたか
  3. 就職してから6か月を過ぎているか
  4. 仕事や生活に、働き続けるうえで整理したい課題があるか
  5. 市区町村へ申請し、就労定着支援の支給決定を受けられるか

このチェックだけで、利用できるかを本人が確定することはできません。最終的な支給決定は住んでいる市区町村が、一人ひとりの状況と利用意向を確認して行います。対象と思っても、まず窓口へ相談してください。

就職前に障害福祉サービスを利用していない場合は、原則として就労定着支援の対象条件に当てはまりません。ハローワークだけを利用して就職した人、一般求人へ自分で応募した人などが考えられます。ただし、就労定着支援を使えないことと、相談できる場所がないことは別です。

当サイトは2026年8月、公開されている当事者の発信を収集し、55の悩み型に分類しました。個人の発言は引用せず、傾向だけを記事作りの参考にしています。

この調査では、入社後すぐに退職した経験と、次の仕事探しへの不安が結びついて語られる例もありました。人数比を示す調査ではないため、一般化はできません。それでも、退職後の相談先を早めに確認する大切さを考える材料にはなります。

就職してまだ6か月以内なら、以前利用していた事業所へ連絡できます。就労移行支援などには、就職後の定着を支える役割があります。「卒業したから連絡してはいけない」と考えず、就職後の担当者と連絡方法を確認しましょう。

休職から復職した場合などにも、制度の対象として検討できる場合があります。扱いは、過去に利用したサービス、雇用の継続状況、現在の課題によって変わります。市区町村と支援事業所へ個別に確認してください。

相談できることと面談の進め方

相談内容によって連携する相手は変わります。共有範囲は本人の同意を確かめて決めます。
  • 担当業務や配慮上司や人事との話し合い方を支援員と相談できます。
  • 体調や通院本人が希望するときは、医療機関も情報共有の候補です。
  • 生活リズムや家計必要に応じて、相談支援事業所や地域の窓口へつなぎます。
  • 課題が重なるとき関係者が同じ場で確認し、誰が何を支えるか役割を分けます。

就労定着支援の役割は、本人、会社、生活を支える人たちの間に入り、困りごとを仕事と生活の両方から整理することです。支援員が本人に代わってすべてを決めたり、会社への要求だけで問題を解決したりする制度ではありません。本人の希望を確認しながら、実行できる方法を一緒に探します。

支援は、本人との対面か、テレビ電話など対面に相当する方法で月1回以上行います。状況に応じて職場や自宅を訪問し、会社や医療機関などと連絡を取ることもあります。情報をどこまで共有するかは、本人の同意を確かめながら進めることが大切です。

表は左右にスクロールして確認できます。

困っていること・就労定着支援で整理できることを確認する表
困っていること就労定着支援で整理できること
面接で相談した配慮が現場へ伝わっていない合意した内容を確認し、本人と会社が話し合う方法を考える
求人票で想像した仕事と実際の担当が違う仕事の範囲と負担を整理し、確認したい点を言葉にする
疲れがたまり、遅刻や欠勤が増えてきた生活リズム、通院、勤務時間、休憩の取り方を一緒に見直す
上司へいつ相談すればよいか分からない職場内の相談相手と、連絡するタイミングや方法を決める
給料日前に生活費が足りなくなる家計の状況を整理し、必要に応じて生活面の相談機関とつなぐ
家族と会社の説明が食い違っている本人の希望を中心に、関係者が共有する情報と役割を整理する

面談前に整理しておくと話しやすいこと

面談の前に長い説明を用意する必要はありません。次の四つを一つの出来事についてメモすると、話しやすくなります。

ここでは、「状況・特性→仕事への影響→自分で試した対応→希望する職場調整」の四段階で整理します。

  1. 状況・特性:いつ、どの仕事で、どのような特性や状況が関係したか
  2. 仕事への影響:何が止まったか、どのくらい疲れたか
  3. 自分で試した対応:メモ、休憩、確認など、すでに行った工夫
  4. 希望する職場調整:会社や支援者と試してみたい方法

たとえば「指示が分からない」とだけ伝えるのではなく、場面と影響を分けてみましょう。「朝礼で三つの作業を口頭で聞くと、順番を忘れて開始が遅れる」と伝える方法があります。「自分でもメモしているが間に合わないので、優先順位をチャットでも確認したい」と続けると、希望が明確です。

困りごとを具体的にすることは、自分を責めることではありません。調整できる場所を見つけるための材料です。

配慮事項を整理するメモを使うと、面談で伝える内容を少しずつまとめられます。支援員へ見せる前提でなく、自分用のメモとして使っても構いません。

利用を始める流れと費用

手続きを一度で覚える必要はありません。次に行うことを窓口で一つずつ確認できます。
  • 対象と開始できる時期自分の利用歴と就職日から、いつ申請できるかを尋ねます。
  • 地域の事業所利用を相談できる事業所の探し方と一覧の有無が確認項目です。
  • 必要な書類と担当者計画案を誰と作るか、次に連絡する相手の名前を聞いておきます。
  • 費用と別にかかるお金負担上限に加え、交通費などの実費があるかも質問できます。

最初の相談先は、住んでいる市区町村の障害福祉窓口です。以前利用していた事業所や相談支援事業所へ先に相談し、手続きの入口を一緒に確認する方法もあります。

利用開始までのおおまかな流れは次のとおりです。自治体によって案内の順序や必要書類が異なるため、窓口の説明を優先してください。

  1. 市区町村の障害福祉窓口へ、就労定着支援を使いたいと相談する
  2. 以前の支援事業所や現在の会社での状況、困りごとを伝える
  3. 利用できる就労定着支援事業所を探し、面談方法や支援内容を確認する
  4. サービス等利用計画案を準備し、市区町村へ利用を申請する
  5. 支給決定後に障害福祉サービス受給者証を受け取る
  6. 事業所と契約し、相談の頻度、連絡方法、共有する情報を決める

障害福祉サービスの利用者負担は、原則としてサービス費用の1割です。ただし、実際に支払う額には世帯所得に応じた月ごとの上限があり、上限を超えて負担することはありません。

表は左右にスクロールして確認できます。

区分・世帯の状況・負担上限月額を確認する表
区分世帯の状況負担上限月額
生活保護生活保護を受けている世帯0円
低所得市町村民税が非課税の世帯0円
一般1※市町村民税課税世帯で所得割16万円未満9,300円
一般2上記以外37,200円

※一般1からは、20歳以上の入所施設利用者とグループホーム利用者が除かれます。市町村民税課税世帯の場合、この人たちは一般2です。

利用者負担を決める「世帯」の範囲は、18歳以上では本人と配偶者です。ただし、施設に入所する18歳・19歳は「障害児」の扱いです。保護者が属する住民基本台帳上の世帯で判断します。

実家で暮らしていても、この例外でなければ、親やきょうだいの所得は原則として含みません。

自分がどの区分になるか、ほかの障害福祉サービスと同じ月に利用するとどうなるかは、市区町村が確認します。金額を自分で計算して利用を諦めず、申請前に窓口で聞いてください。面談場所までの交通費など、サービス費とは別にかかる費用があるかも事業所へ確認します。

事業所の探し方と支援終了後の備え

支援が終わった後も迷わないように、連絡先と共有する情報を一枚にまとめておきます。
  • 最初に連絡する相手仕事と生活のそれぞれで、困ったときの窓口を一つ決めます。
  • 共有してよい情報会社、医療機関、支援機関ごとに伝えてよい範囲を残します。
  • 職場内で頼れる人上司、人事、同僚など、職場で相談できる相手を確認しておくと安心です。
  • 再び困ったときの手順どの状態になったら誰へ連絡するか、具体的な順序が役立ちます。

以前通っていた就労移行支援などの事業所が、そのまま就労定着支援も行っているとは限りません。行っていない場合は、別の事業所を選んで利用できます。利用者が以前の事業所だけに限定される仕組みではありません。

はたらく手がかりでは、WAM NETの2026年3月スナップショットを集計しました。対象は就労移行支援、就労継続支援A型・B型、就労定着支援の4サービスです。同じ事業所番号は一つに統合しています。

4サービスのいずれかを提供する事業所は、重複を除いて全国26,109か所でした。そのうち、WAM NET上で就労定着支援の提供情報が登録された事業所は2,034か所です。47都道府県すべてに確認できました。

都道府県別では、東京都が268か所で最多でした。秋田県と佐賀県は、それぞれ5か所でした。

就労移行支援を提供する3,359事業所のうち、WAM NET上で就労定着支援の提供情報も登録された事業所は1,033か所です。割合は30.8%でした。

これらはWAM NET上に登録された提供情報を集計した数です。ある月に実際に利用者がいた請求事業所数とは定義が異なります。

現在の受け入れ状況も示しません。利用前に事業所と市区町村へ確認してください。

事業所を比べるときは、場所だけでなく次の点を見ます。

  • 平日の日中に働いていても相談できる時間帯か
  • 対面、職場訪問、電話、オンラインなど、利用できる面談方法は何か
  • 会社と連絡を取る前に、本人へどのように確認するか
  • 体調や生活面について、医療や地域の支援機関と連携できるか
  • 急に困ったときの連絡方法と、返答までの目安はどうなっているか
  • 利用期間の終了前に、次の相談先をどう一緒に決めるか

就労定着支援の事業所一覧では、地域から候補を探せます。登録情報だけでは、現在の受け入れ状況や面談方法までは分かりません。

候補が見つかったら、公式サイトか電話で確認してください。見学や初回相談の質問は、事業所見学のチェックリストにもまとめています。

最長3年の利用期間が終わっても、支援が一度に消えるわけではありません。現在の制度では、継続した支援が必要な人を適切に引き継ぐ体制が求められています。就労定着支援事業所は、利用終了前から会社や関係機関と準備します。

引き継ぎ先には、障害者就業・生活支援センターや地域障害者職業センターがあります。ハローワーク、相談支援事業所、医療機関、市区町村、雇用先の会社なども候補です。本人の同意なしに、すべての情報を共有するという意味ではありません。

誰に何を伝えるかを確認し、今後困ったときの連絡先を決めておくと安心です。

就労定着支援の対象外だった人も、これらの窓口へ相談できる場合があります。仕事の調整が中心なら、地域障害者職業センターやハローワークが相談先になります。仕事と生活を一緒に相談したいなら、障害者就業・生活支援センターが候補です。

困っている内容から入口を選びます。

事業所が示す「定着率」を比べるときは、数え方と対象期間を確認してください。就職者の範囲、何か月後を定着とするか、集計した年度が違えば、数字をそのまま横に並べることはできません。高い数字だけで選ばず、自分が必要とする支援を受けられるかを確かめます。

まとめ

詳しく説明できなくても、相手に合わせた一言から相談を始められます。
  1. 以前の事業所へ「就職後の相談を担当する人を教えてください」と伝えます。
  2. 市区町村の窓口へ「就労定着支援の対象になるか確認したい」と相談できます。
  3. 候補の事業所へ「働きながら相談できる時間と方法を知りたい」が入口です。

就労定着支援は、対象となる障害福祉サービスを利用して就職した人のための制度です。就職後6か月を過ぎてから、仕事と生活の困りごとを相談できます。利用は最長3年間で、個別の可否と支給期間は市区町村が決めます。

以前の事業所が就労定着支援を行っていなくても、別の事業所が選択肢です。対象外の場合や利用終了後も、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、ハローワークなどの相談先があります。

今日できることは、以前利用していた事業所へ一つ質問することです。「就職後の担当者は誰か」か「就労定着支援も行っているか」を確認します。連絡しにくければ、市区町村の障害福祉窓口へ相談するところから始められます。