「就労移行支援」という名前を聞いても、働く場所なのか、学ぶ場所なのかは分かりにくいものです。通えば就職できるのか、利用中の生活費はどうするのかと、不安が重なることもあります。

就労移行支援は、一般企業などへの就職を目指す人が使う障害福祉サービスです。事業所と雇用契約を結び、賃金を受け取る制度ではありません。働く準備、職場探し、就職活動、就職後の相談をつなげて支える仕組みです。

この記事では、2026年8月時点の対象、支援内容、期間、利用料、手続きを一次資料から整理しました。読み終えると、自分に合いそうかを考え、どこへ何を相談すればよいかを具体的に決められます。

就労移行支援とはどんな制度か

支援事業所で準備する期間と、勤務先に雇用される時点を分けた図です。
  1. 利用中支援事業所とは雇用契約を結ばず、就職に向けた準備を整えます。
  2. 就職活動希望と負担を整理し、応募する勤務先を本人が選ぶ段階です。
  3. 就職後勤務先と雇用契約を結び、必要に応じて支援事業所へ相談します。

就労移行支援は、一般企業などで働くことを希望する人が、就職に必要な準備と支援を受ける制度です。障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つです。

厚生労働省の説明を平易にすると、支援は次の四つにつながっています。

  • 作業や職場体験を通じて、働くための知識や技能を身につける
  • 自分の希望や得意なこと、負担になりやすいことを整理する
  • 求人を探し、応募書類や面接などの就職活動を進める
  • 就職した後に、仕事を続けるための相談を受ける

通所して訓練だけを受ける場所ではありません。希望する仕事を一緒に探し、職場実習を行い、応募先との調整を受けることもあります。就職した後の相談まで含む点が特徴です。

一方、就労移行支援の事業所と雇用契約を結んで働く制度ではありません。A型のように事業所から賃金を受け取ることを主な目的にしたサービスとは役割が異なります。

表は左右にスクロールして確認できます。

サービス・主な役割・事業所との雇用契約を確認する表
サービス主な役割事業所との雇用契約
就労移行支援一般企業などへの就職準備と就職活動を支える原則として結ばない
就労継続支援A型支援を受けながら雇用契約に基づいて働く結ぶ
就労継続支援B型雇用契約を結ばず、生産活動などに取り組む結ばない
就労定着支援就職後に仕事と生活の課題を調整する就労定着支援事業所とは結ばない(勤務先とは結ぶ)

この表は制度の位置だけを示したものです。どれが上という順番はありません。

働く時期、希望する契約、体調、必要な支援で選択は変わります。詳しい比較は就労移行支援・A型・B型の違いと選び方で確認できます。

就労移行支援を利用すれば、就職が保証されるわけではありません。訓練内容、地域の求人、事業所の支援方法、本人の希望との相性によって経過は異なります。就職者数や就職率を見る場合は、対象期間と分母を確かめることが大切です。

厚生労働省の「社会福祉施設等調査」は、毎年10月1日時点で前年1年間の実績を集計します。令和6年調査では、就労移行支援から一般就労へ移った人は16,827人でした。

この数は、同じ年に通っていた全員の将来を表すものではありません。候補事業所の実績を見るときは、対象期間と分母も確認してください。

利用できる人と確認する窓口

利用条件を自分で判定せず、現在分かっていることを三つに分けて伝える図です。
  • 働きたい方向一般就労、再就職、復職など、現時点の希望を言葉にします。
  • 現在の状況年齢、手帳や診断書、休職・在職の状況を分かる範囲でまとめる材料です。
  • 確認したいこと対象になるか、必要書類は何か、どこを見学できるかを尋ねます。

制度上は、一般企業などで働くことを希望し、就職に向けた支援が必要な人が対象です。実際に利用できるかは、本人の希望と状況を確認したうえで市区町村が決めます。

厚生労働省は、主な対象を「就労を希望する65歳未満の障害者」と説明しています。通常の事業所に雇用されることが見込まれる人です。

ここでいう「見込まれる」は、今すぐ一人で働けるという意味ではありません。訓練や職場探しなどの支援を受けて、一般就労を目指すことを含みます。

表は左右にスクロールして確認できます。

確認すること・制度上の考え方・確認先を確認する表
確認すること制度上の考え方確認先
年齢主な対象は65歳未満。継続利用には65歳以上の例外がある市区町村の障害福祉窓口
障害や難病身体・知的・精神障害のほか、対象となる難病等もある市区町村の障害福祉窓口
障害者手帳手帳の有無だけで自己判断しない必要書類を市区町村へ確認
休職中所定の要件を満たす場合に復職支援として使えることがある市区町村、勤務先、主治医等
在職中労働時間を延ばすため一時的な支援が必要な場合など、対象となることがある市区町村と支援機関

65歳以上でも、65歳になる前から一定の条件で障害福祉サービスを継続していた人は対象となる場合があります。支給決定の履歴を使って確認するため、年齢だけで諦めず窓口へ尋ねてください。

手帳がない場合も、ウェブ上の説明だけで利用できる、できないとは決められません。自治体によって確認する書類や手順が異なります。「手帳はないが、働くための支援を相談したい」と伝え、必要な確認方法を聞きます。

休職中の利用も一律ではありません。復職のために支援が必要で、勤務先や医療機関などによる支援だけでは足りない場合に、対象となることがあります。利用中の目的が再就職か復職かで支援計画も変わるため、最初に希望を伝えます。

障害名だけで向き不向きを決める制度でもありません。同じ診断名でも、通勤の負担、疲れやすい時間、経験、希望する仕事は異なります。対象になるか分からない状態は、相談を始めてよい状態です。

受けられる支援は大きく4つ

希望が計画や実習、就職後の相談へどうつながるかを見る図です。
  1. 希望を伝える希望職種、経験、通所の負担を伝え、目標の出発点をそろえます。
  2. 内容を試す教材や作業の難しさを体験し、自分に合う調整が可能か確かめる段階です。
  3. 振り返り方を聞く訓練や実習で分かったことを、個別支援計画へどう反映するか尋ねます。
  4. 就職後の連絡を確認相談できる期間、連絡方法、勤務先との調整範囲が確認項目です。

就労移行支援では、準備だけでなく、職場探し、就職活動、就職後の相談まで受けられます。ただし、具体的なプログラムと得意分野は事業所ごとに違います。

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支援・具体的な内容の例・確認したいことを確認する表
支援具体的な内容の例確認したいこと
働く準備生活リズム、通勤練習、パソコン、作業、対人場面の練習自分の経験に合う内容か
職場を知る企業見学、職場実習、得意・負担・配慮の整理希望する職種の実習があるか
就職活動求人探し、応募書類、面接練習、企業との調整応募先を本人が選べるか
就職後本人との面談、勤務先との調整、困りごとの整理相談できる期間と連絡方法

働く準備では、全員が同じ訓練を受けるとは限りません。個別支援計画に、目標、支援内容、振り返る時期をまとめます。計画は支援者だけで決めず、本人の希望を確認しながら作るものです。

パソコン講座や軽作業の名前が同じでも、難しさや進め方は異なります。社会人経験がある人には初歩的すぎる一方、初めて取り組む人には速すぎる場合もあるでしょう。見学では教材だけでなく、個別に内容を調整できるかを聞いてください。

職場実習は、合否を付ける試験だけではありません。実際の環境で、どの時間帯に疲れやすいか、どの説明が分かりやすいか、休憩後に戻りやすいかを確かめる機会にもなります。実習先の職種と期間、振り返り方法を事前に確認してください。

就職活動では、支援者が応募先を決めるのではなく、本人が選ぶための材料を増やします。求人票の条件、通勤、仕事の内容、開示する情報、必要な配慮を整理します。応募書類や面接で何を伝えるかも検討対象です。

就職後は、仕事の手順、勤務時間、上司との相談方法などを調整できる場合があります。就労移行支援からの支援が終わった後も支援が必要なら、就労定着支援など別の制度へつなぐことがあります。

見学では、一日の時間割だけでなく「自分の希望から個別支援計画をどう作るか」を聞いてみましょう。施設見学チェックリストを使うと、複数の候補を同じ項目で比べられます。

利用期間と延長の考え方

残り期間と、これまでの進み方、次に確かめることを分けた図です。
  • 残り期間事業所を変える前に、市区町村へ支給決定の残り期間を確認します。
  • これまでの進み方訓練や実習でできたことと、まだ確かめたいことが振り返りの材料です。
  • 次の3か月の目標就職期限だけでなく、次に試すことや確認することを決めます。
  • 延長の目的追加期間で何を確かめたいかを、市区町村へ伝えられる言葉にします。

就労移行支援の標準利用期間は2年間です。全員が2年間通うという意味ではなく、市区町村が必要な期間を支給決定し、状況に応じて見直します。

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確認する場面・手元で整理すること・主な確認先を確認する表
確認する場面手元で整理すること主な確認先
利用開始前最初に取り組む目標と、支給決定された期間市区町村、候補事業所
利用中の振り返りできたこと、次の3か月で試すこと、更新時期事業所、市区町村
事業所を変える前現在の支給決定の残り期間と、引き継ぎたい希望市区町村、現在と次の事業所
延長を相談するとき追加の支援が必要な理由と、その期間に見込める変化市区町村、相談支援事業所

「最大1年間の更新」は、自動的に使える追加期間ではありません。これまでの支援、現在の状況、延長により見込めることを整理し、市町村審査会の個別審査を経て判断されます。

2027年4月以降は、標準利用期間を超えて利用する場合、原則として就労選択支援を利用する予定です。就労選択支援では、働く希望や適性、課題を整理するアセスメントを受けます。

この取り扱いは、地域の支援体制の整備状況を踏まえて始まる予定です。制度は変わる可能性があるため、延長を考える時点で最新情報を確認してください。

事業所を途中で変えた場合も、利用期間が最初から戻るとは限りません。同じサービスの支給決定期間として扱われることがあるため、変更前に市区町村へ残り期間を確認します。

2年以内に就職できなければ本人の努力が足りない、という意味ではありません。求人の状況、実習先、体調、支援との相性など多くの条件が関係します。期間が気になるときは、「いつまでに就職するか」だけでなく、「次の3か月で何を確かめるか」を支援者と決めます。

利用料と通う間にかかるお金

利用料の上限、通所実費、生活費を一つの月額メモにする図です。
  1. 利用料の上限を確認市区町村の説明で、自分の負担上限月額を確認します。
  2. 通う回数を仮置き週の通所日数から、1か月の交通費を見積もる段階です。
  3. 実費を足す昼食代、教材費、体験利用の費用を月額へ足します。
  4. 生活費と照合収入がない期間も含め、毎月の生活費と合計額を照合する作業です。

障害福祉サービスの利用料には、所得に応じた月ごとの負担上限があります。利用日数が増えても、上限を超えてサービス利用料を支払うことはありません。

成人が通所サービスを利用する場合、所得を判断する世帯の範囲は原則として本人と配偶者です。親と同居していても、親の所得をそのまま合算する考え方ではありません。

表は左右にスクロールして確認できます。

所得区分・負担上限月額を確認する表
所得区分負担上限月額
生活保護受給世帯0円
市町村民税非課税世帯0円
市町村民税課税世帯で一定所得未満9,300円
上記以外37,200円

この表は2026年8月時点の国の区分です。自分がどこに当たるかは、前年の所得や世帯の状況などをもとに自治体が確認します。表だけで負担額を決めず、市区町村からの説明を確認してください。

サービス利用料とは別に、交通費、昼食代、教材費などの実費がかかることがあります。交通費の助成や昼食の扱いは、自治体や事業所ごとの確認事項です。

見学では、次の金額を分けて聞くと整理しやすくなります。

  • 障害福祉サービスの自己負担上限はいくらか
  • 交通費は月にどのくらいかかるか
  • 昼食代や教材費など、毎月の実費はいくらか
  • 利用中に収入を得られない期間の生活費をどう考えるか
  • 体験利用中にかかる費用はあるか

利用中にアルバイトができるか、給付や手当へ影響するかは、本人の状況と自治体の運用で変わります。この記事だけで個別判断はできません。収入が必要な事情も隠さず、申請前に市区町村や相談支援専門員へ伝えてください。

相談から利用開始までの流れ

手続きの順番は本文で確認し、次の相談や比較に使う記録を示した図です。
  • 相談メモ働きたい時期、通所の心配、見学で聞きたいことを三行で残します。
  • 候補と見学記録候補の支援内容、質問への回答、実際に感じた負担を比べる記録の土台です。
  • 計画案と申請の控え市区町村の案内に沿って提出した書類と、伝えた希望の控えを保管します。
  • 受給者証と契約書利用期間、負担上限月額、欠席や相談に使う連絡先が確認対象です。

最初の入口は、市区町村の障害福祉窓口または相談支援事業所です。利用する事業所を決めていなくても、「就労移行支援を検討している」と相談できます。

  1. 希望と困りごとを伝える 働きたい時期や、体調、通勤で困ることを話します。「まだ分からない」項目があっても構いません。
  2. 候補を探す 通える範囲、支援内容、実習先、相談方法から候補を控えます。
  3. 見学や体験をする 一日の流れ、雰囲気、休憩、プログラムの難しさを確かめる段階です。
  4. 申請と計画案を進める 必要書類をそろえ、市区町村へ申請します。
  5. 支給決定を受ける 市区町村の確認後、受給者証の交付を受けます。
  6. 事業所と契約する 支援内容、費用、連絡方法を確認したら、契約して利用開始です。

申請後、市区町村からサービス等利用計画案の提出を求められた場合は、相談支援事業所と計画案を作成します。自治体の案内によっては、本人が作るセルフプランを提出する場合もあります。

候補探しは、近さだけで決めなくて大丈夫です。無理なく通えることは大切ですが、希望する職種の実習、個別面談、就職後の支援なども比べます。通所日数を少なく始められるか、体調に合わせて見直せるかも確認項目です。

当サイトは、WAM NETの2026年3月オープンデータを独自に集計しました。対象は、就労移行支援・A型・B型・就労定着支援です。同じ事業所は一件に統合しました。

その条件では、就労移行支援を提供する事業所は全国3,359件です。同じ事業所が複数サービスを提供する場合があります。これは求人件数でも利用可能人数でもありません。

地域によって候補数には差があります。一つの市区町村で見つからない場合は、隣接地域、オンライン相談、地域障害者職業センターなど別の入口も窓口で尋ねてください。全国の就労移行支援事業所では、都道府県から候補を探せます。

相談前に用意するメモは、三行で十分です。

  • 働きたい時期は、今すぐか、準備してからか
  • 通ううえで心配なことは何か
  • 見学で確かめたいことは何か

この三行を見せて「自分が対象になるかと、近くの候補を知りたい」と伝えれば、最初の相談を始められます。

まとめ:今日できる小さな一歩

利用の可否や事業所は相談後に決め、今日は相談先を一つ控えるところまでで十分です。
  • 今は決めなくてよい利用するか、どの事業所にするか、いつ就職するかは相談や見学の後で決められます。
  • 今日決める市区町村の相談先を一つ控え、対象と見学候補を聞くための連絡先を確認します。

就労移行支援は、一般企業などへの就職に向けて、準備、職場探し、就職活動、就職後の相談をつなぐ制度です。標準利用期間は2年間で、利用料には所得に応じた月額上限があります。

使うかどうかを今日決める必要はありません。まず、住んでいる市区町村の障害福祉窓口を一つ調べます。「就労移行支援の対象と、見学できる事業所を知りたい」と伝えるための連絡先をメモしてみてください。