障がい者雇用の給料を考えるとき、平均額を見て安心したり、反対に将来が難しいと感じたりすることがあります。しかし、平均には働く時間、雇用形態、職業、年齢などが異なる人が含まれます。その数字が、そのまま自分の月給になるわけではありません。

先に結論をいうと、給料は障がい者雇用という区分だけでは決まりません。求人ごとの仕事内容、労働時間、賃金形態、経験、手当などで変わります。平均額は市場全体を知る参考として使い、自分の見込みは求人票と労働条件で確かめます。

この記事では、厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査を、対象と時点を明示して読み解きます。そのうえで、求人票の月額、時給、手当、賞与、手取りの違いと、無理なく続けながら収入を考える順番を説明します。

障がい者雇用の平均給料を確認する

統計は市場の参考線、自分の見込みは応募先の求人と契約条件で確認します。
  1. 調査条件を見る対象者、調査時点、賃金に含むものを数字と一緒に確認します。
  2. 時間をそろえる月額は労働時間の影響を受けるため、時間区分を先に見ます。
  3. 求人票へ戻る応募先の時給・月給、所定労働時間、手当から概算します。
  4. 書面で確かめる採用時は労働条件通知書で、最終的な契約条件を確認します。

厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査では、障害種別ごとの1か月の平均賃金が示されています。調査でいう賃金は、労働契約や就業規則などであらかじめ定めた支給条件により支払われる給与で、超過勤務手当も含みます。

表は左右にスクロールして確認できます。

調査上の区分・1か月の平均賃金・超過勤務手当を除く所定内給与額を確認する表
調査上の区分1か月の平均賃金超過勤務手当を除く所定内給与額
身体障害者23万5千円22万3千円
知的障害者13万7千円13万3千円
精神障害者14万9千円14万6千円
発達障害者13万円12万8千円

この表は、障害種別の間に人の価値や能力の差があることを示すものではありません。働いている時間、雇用形態、年齢、勤続年数、職業、企業規模などの構成が区分ごとに異なります。同じ仕事を同じ条件で行う人だけを比べた結果でもありません。

たとえば、調査で週所定労働時間30時間以上の割合は、身体障害者75.1%、精神障害者56.2%、発達障害者60.7%でした。平均月額は働く時間の構成からも影響を受けます。月額の違いを障がい名だけの影響として読むことはできません。

精神障害者の平均賃金は、週所定労働時間でも分けて集計されています。30時間以上は19万3千円、20時間以上30時間未満は12万1千円でした。10時間以上20時間未満は7万1千円、10時間未満は1万6千円です。

これは各時間区分に入る人の平均であり、時給表ではありません。

月の平均額を単純に勤務時間で割って個人の時給を推計すると、実際の出勤日、残業、手当、欠勤などを無視してしまいます。自分が検討する求人は、その求人に記載された時給または月給で計算してください。

また、調査では重複障がいのある人をそれぞれの障害区分へ重複して計上しています。四つの区分を足して一つの全体平均を作ることはできません。この記事でも、根拠のない「障がい者雇用全体の平均給料」は示しません。

平均は「どれくらいもらえるか」という個人予測より、「比較するときに労働時間をそろえる必要がある」と理解するために役立ちます。自分の給与を知る最も近い資料は、応募する求人票と、採用時に交付される労働条件通知書です。

調査の対象と時点を読み違えない

数字だけを切り離さず、調査の意味を変えないための確認項目です。
  • いつの賃金か令和5年度調査の賃金は2023年5月中の状況です。
  • 誰が対象か常用労働者5人以上の民営事業所から抽出した調査です。
  • 何を含むか契約などで定めた給与で、超過勤務手当を含む月額です。
  • 手取りかどうか税と社会保険料などを引く前の金額で、振込額とは異なります。

平均賃金を利用するときは、調査名、対象、時点、賃金の定義を一組で確認します。数字だけを別のサイトへ移すと、「今の求人すべての平均」「手取りの平均」のように意味が変わりやすいためです。

令和5年度障害者雇用実態調査の実施時点は2023年6月1日です。賃金と労働時間については、2023年5月中の状況を調べています。公開時点の2026年8月に提示されている求人の賃金額を集計したものではありません。

調査対象は、全国の主要産業に属し、常用労働者を5人以上雇用する民営事業所から無作為に抽出された約9,400事業所です。回答は6,406事業所で、回収率は67.9%でした。回答事業所の情報を産業と規模に応じて復元し、推計値として示しています。

調査上の「精神障害者」「発達障害者」などには定義があります。会社が本人の障がいを把握している人が対象であり、診断があっても会社へ伝えていないすべての労働者を数えた調査ではありません。一般求人で障がいを伝えず働く人を含む市場全体の給料とも異なります。

賃金は税込みの支給額です。所得税や住民税、健康保険、厚生年金、雇用保険などが差し引かれる前の金額を基にしています。銀行口座へ振り込まれる手取り額ではありません。

賞与を月割りした年収平均でもありません。調査の月額賃金と、求人票の「賞与あり」を足して年収を考える場合は、賞与の前年度実績、対象者、算定期間を別に確認する必要があります。「年2回」と書かれていても、支給額が決まっているとは限りません。

平均を比較する前には、次の四つを読み取ります。

  1. いつの賃金か
  2. 誰を対象にした調査か
  3. 月給、時給、手当、残業をどこまで含むか
  4. 税や社会保険料を引く前か後か

別の調査と比べるときも、条件がそろっていなければ増減を断定できません。2023年の平均額と2026年の最低賃金をそのまま比べても、労働時間や集計範囲が異なります。統計は参考線、求人票は現在の候補、労働条件通知書は採用時の契約条件として、役割を分けます。

給料の差は複数の条件から生まれる

障害者雇用という区分だけでなく、求人ごとの条件が重なって月額が決まります。
  • 労働時間一日と週の時間、残業、欠勤時の扱いが月額に影響します。
  • 雇用形態契約期間、更新、正社員かどうかだけでなく条件を見ます。
  • 仕事内容担当範囲、判断、責任、必要な技能を具体的に確認します。
  • 経験と評価経験の反映、評価時期、仕事を広げる条件を聞きます。
  • 手当と賞与毎月確実な支給か、条件で変わる支給かを分けます。
  • 地域地域別最低賃金や地域の求人条件が異なります。

障がい者雇用の給料が求人ごとに違う理由は一つではありません。主な条件は、働く時間、雇用形態、仕事内容、経験や技能、会社の賃金制度、地域です。障がい者雇用だから必ず低い、一般雇用なら必ず高いとは言い切れません。

月の給料へ大きく影響するのは、勤務時間です。同じ時給でも週20時間と週30時間では月額が変わります。時給求人では、月の所定労働時間、祝日やシフトで勤務日数が変わるか、欠勤時にどうなるかを確認します。

雇用形態も見ます。正社員、契約社員、パートという名称だけでなく、契約期間、更新基準、無期転換も確認してください。

昇給、賞与、退職金の有無も求人票で確認します。「正社員登用あり」は、登用時期や実績を保証する言葉ではありません。応募前に、登用の基準と過去の実績を質問できます。

仕事内容では、担当範囲と責任の大きさが賃金制度に関わります。同じ「事務」でも、決められた入力だけを行う仕事と、顧客対応や判断を伴う仕事では役割が異なります。最初は担当が限られていても、経験後に仕事を広げられるか、広げた場合に評価へ反映されるかを聞くと、将来の見通しを持ちやすくなります。

配慮を受けることと、能力を正しく評価されることは両立します。厚生労働省の障害者雇用対策基本方針は、必要な合理的配慮と能力の正当な評価を示しています。適性や希望も踏まえ、多様な業務を経験する機会など、キャリア形成への配慮も含まれます。

一方、勤務時間を増やすことや難しい仕事を引き受けることだけを、給料を上げる正解にする必要はありません。体調を崩して続けられなければ、収入の見通しも不安定になります。現在の時間で習熟を評価する制度、役割手当、資格手当など、別の道があるかも確認します。

地域によって最低賃金と求人相場が異なります。障がいがあることだけを理由に、会社が自由に最低賃金を下回る賃金を決めることはできません。最低賃金は原則として雇用形態や名称を問わず労働者に適用されます。

精神または身体の障がいにより、担当業務について労働能力が著しく低い場合などには、個別の減額特例があります。使用者が都道府県労働局長の許可を受けた場合に限られます。

障害者手帳を持つ人へ一律に適用する制度ではありません。求人の時間額が最低賃金より低く見える場合は、計算条件と許可の有無をハローワークや労働局へ確認してください。

求人票から自分の月収を計算する

求人票の勤務時間と賃金から月収を確かめるための電卓
月収の見込みは、求人ごとの勤務時間と賃金条件を手元で確かめます。写真:Cht Gsml / Unsplash(新しいタブで開きます)

総支給額を一つの数字で見ず、変わらない部分と条件で変わる部分を分けます。

  1. 賃金形態月給、日給、時給、年俸のどれかを確認します。
  2. 所定労働時間時給や日給は、標準的な勤務時間と日数を掛けます。
  3. 手当と残業定額手当、条件付き手当、固定残業代を分けます。
  4. 控除前後求人の税込み総支給額と、税・保険料控除後の手取りを分けます。
  5. 採用時の書面試用期間、契約更新、賞与を労働条件通知書で確認します。

平均額を見た後は、候補の求人票を一件ずつ同じ書式で比べます。ハローワークの求人情報では、フルタイム求人の賃金は税込み月額、パート求人は原則として時間額で表示されます。日給や月給のパート求人も、平均的な勤務時間から時間額へ換算して表示される場合があります。

まず確認するのは賃金形態です。

  • 月給:月額を決めて支給する
  • 日給:日額に勤務日数を掛けて支給する
  • 時給:時間額に勤務時間数を掛けて支給する
  • 年俸:年額を各月へ分けて支給する

次に、基本給、定額的に支払われる手当、固定残業代を分けます。求人票の月額に固定残業代が含まれる場合は、対象となる時間数と、超過した分を別に支払う条件を確認します。通勤手当や皆勤手当は、全員へ毎月同じ条件で支給されるとは限りません。

時給求人の概算は、次の順番で行います。

  1. 時給を確認する
  2. 一日の所定労働時間を掛ける
  3. 一週間の勤務日数を掛ける
  4. 一か月の平均的な勤務週数で概算する
  5. 毎月決まって支給される手当を確認する

たとえば時給だけで月額を考えるとき、祝日、シフト、欠勤、残業で実額は変わります。概算は生活費を保証するものではありません。採用担当へ「標準的な月の所定労働時間と、総支給額の例」を聞くと、求人票の換算条件を確かめられます。

手取りは、総支給額から税と社会保険料などを引いた後の金額です。年齢、扶養、住民税、加入する保険などで差し引かれる額が変わるため、記事内で一律の割合は示せません。会社へ社会保険の加入条件を確認し、個別の見込みは年金事務所、税務署、自治体など適切な窓口へ相談します。

求人票で最低限そろえたい項目は次のとおりです。

表は左右にスクロールして確認できます。

項目・見る内容・面接で聞く例を確認する表
項目見る内容面接で聞く例
基本給下限と上限、決め方経験はどの条件で反映されますか
勤務時間一日の時間、週の日数、残業通院日の時間調整は相談できますか
手当支給条件と毎月かどうか全員対象と条件付きの手当を分けて教えてください
賞与・昇給前年度実績、対象、評価時期最初の評価はいつ、何を基準に行いますか
試用期間期間中の賃金と仕事内容本採用後と異なる条件はありますか
契約更新契約期間、更新基準、上限更新判断はいつ、どのように伝えられますか

面接で聞きづらい場合は、ハローワークの紹介担当者を通じて確認できます。障がい者向け転職サービスを使う場合も、求人の下限額、想定時間、選考時に確認した条件を記録してください。障がいのある人の仕事探しガイドでは公的窓口との使い分けを、転職サービス比較では広告表記を含む選び方を確認できます。

収入と続けやすさを一緒に比べる

月額だけでなく、続ける条件と将来の変化を同じ求人ごとに並べます。
  • 収入基本給、確実な手当、変動する賞与、通勤などの支出を見ます。
  • 続ける条件勤務時間、通勤、休憩、配慮、相談方法を確かめます。
  • 将来の変化昇給、評価、役割、時間、契約更新を見直す時期を聞きます。
  • 外部の相談不明点はハローワークや紹介担当者を通じて確認できます。

給料の高い求人を希望することは自然です。ただし、月額だけを比べると、勤務時間、通勤、休み方、仕事内容が見えなくなります。自分にとっての選びやすさは「収入」「続ける条件」「将来の変化」の三つで考えます。

収入では、総支給額と手取りを分け、毎月確実な基本給・手当と、条件で変わる残業・賞与を分けます。生活費の見通しには、交通費や昼食、通院など働くために増える支出も含めてください。

続ける条件では、勤務時間だけでなく、通勤を含めた一日の負担を見ます。週20時間の求人でも、片道90分の混雑した通勤があれば、近くの週25時間より負担が大きい場合があります。休憩方法、在宅勤務の範囲、相談先も同じ表へ書きます。

将来の変化では、昇給、契約更新、仕事を広げる機会、勤務時間を見直す手順を確認します。「将来は増やせる」という口頭説明だけでなく、評価時期と判断基準を聞いてください。反対に、時間を増やさない選択をしたとき、現在の役割でどのように評価されるかも大切です。

会社へ希望を伝えるときは、給料だけを要求する形にせず、できる仕事と条件をセットにします。たとえば「手順を習得した後はチェック作業も担当したい。評価の時期と必要な技能を知りたい」と聞けば、具体的な成長の道を確認できます。

合理的配慮が必要な場合は、それによって行える仕事も伝えます。「定期面談があれば早めに負担を相談でき、担当業務を安定して続けやすい」のように説明します。配慮と評価を別々の話にせず、働ける条件として共有してください。

求人の賃金が希望より低いときも、すぐに自分の価値へ結びつけないことが大切です。その会社の職務設計、契約時間、賃金制度による結果です。別の求人、別の職種、訓練を経て応募する道など、選択肢を増やせます。

給料の相談を一人で進めにくい場合は、ハローワークの障がい者専門窓口を利用できます。応募書類や面接の準備に加え、求人条件の確認も相談できます。転職サービスを利用するときも、民間サービスだけに任せず、公的窓口を併用して構いません。

障がい者雇用の基本と配慮の考え方を確認したい場合は、障がい者雇用とはへ戻ってください。給料は重要な条件ですが、働き方全体の一部です。仕事、時間、配慮、収入を同じ求人ごとにそろえて比べると、自分の判断になります。

この記事では、公的統計、求人票、労働条件通知書の役割を分けます。収入、続ける条件、将来の変化で比べるための判断補助です。

この枠組みは、当サイトが2026年8月10日に実施した「障害者転職 当事者インサイト調査」を基に作りました。調査は公開情報から当事者・支援者などの声約570件、引用約900か所を収録しています。

ただし、間接引用や時期を確認できない記録もあるため、体験談の件数を平均給料や一般的傾向の根拠には使っていません。賃金額は厚生労働省の統計、個別条件は求人票と労働条件通知書で確認する前提です。統計は2027年2月18日までに再確認し、更新できなければ公開対象から外します。

まとめ

平均から個人を予測せず、候補求人の現在の条件を三つだけ確かめます。
  • 総支給額基本給、定額手当、固定残業代がどう分かれているか見ます。
  • 所定労働時間一日と週の時間、休憩、標準的な月の時間を確認します。
  • 毎月の手当全員対象か、条件を満たす場合だけかを確認します。

障がい者雇用の給料は、障がい者雇用という区分だけでは決まりません。厚生労働省の平均賃金は、2023年5月の賃金を障害種別に集計した参考値であり、個人の月給や手取りを予測する数字ではありません。

求人を比べるときは、基本給、時間、手当、固定残業代、賞与、試用期間、契約更新を同じ表に並べます。月額とともに、通勤、休憩、相談方法、評価の条件も確認してください。

今日できる一歩は、気になる求人を一件選び、「総支給額」「所定労働時間」「毎月の手当」の三つへ印を付けることです。分からない欄は推測せず、ハローワークや採用担当へ質問しましょう。